志望動機も自己PRもなく、10秒で入力が完結する「日本一短いES」。志望学生と社員が、おたがいの24時間を共にする選考コース「48時間」。連絡先と入社希望日を入力すれば内定が出る「即、採用コース」——。
当社代表の杉浦二郎は、企業の人事担当として、また採用プランナーとして、これまでさまざまな切り口から独自の採用手法を提案・実践してきました。2015年10月のモザイクワーク設立後は、企業の採用活動をフックとし、より多様な価値観・考え方で生きられる社会を目指して活動しています。
この記事は、代表取締役CEOの杉浦と取締役COOの髙橋実、2人の思いをお伝えする連載。第1回は、モザイクワークについて。当社では、いまどのような仕事を手がけているのか。そしてその背景には、どんな課題意識があるのか、語ります。
シンプルなアイデアの裏にある「断捨離」のプロセス
「アイデア一発勝負でしょ」「バズを狙った、ただのネタじゃないの?」—— モザイクワークが提案する採用手法を見ると、そんな印象をもたれる方が多いかもしれません。
「まあ、僕はそれでもいいと思っているんです。表向きにはそう見えていても、裏側では死ぬほど考えに考え抜いて、とぎすまされた選考方法なんですから」(杉浦)
杉浦はこれまでも、企業の人事担当・採用プランナーとしてユニークな選考を導入しては、その都度、一定の成果を生み出してきました。
代表的な例として、2016年に三幸製菓で実施した「日本一短いES」があります。選考画面に表示されるのは、たった3つのステップだけ。
「おせんべいは好き?」「ニイガタで働ける?」という2つの質問に「Yes」と答えると、「あなたの連絡先(メールアドレス)を心を込めて入力して下さい」と表示されます。
エントリー所要時間はわずか10秒。企業側が求めることを、最小限に絞った結果のESです。
一見すると、突飛な案に見えるかもしれません。しかしモザイクワークは、決して思いつきのアイデアで勝負しているわけではないのです。
「アイデアを新たに出すというより、たった一つの答えにたどり着くまで、徹底的に断捨離しているような感じです。企業が本当に必要としていることは何か。問い続けることで、必ず最終的にはシンプルなゴールにたどり着くはずだ、と」(髙橋)
モザイクワークがKPIの一つとしているのは、採用活動において、分母となる応募者数と、分子になる採用人数の差を極限まで近づけていくこと。
極論をいえば、社員を1人採用したいなら、要件にマッチした1人の応募があればいいわけです。母数をいたずらに増やして、その中から手間ヒマをかけて選考する必要はないはず……。
モザイクワークがこうした採用プランニングを手がける背景には、杉浦・髙橋それぞれが感じていた課題意識がありました。
個人の働き方も、企業のエゴも多様でいい
「今の採用の形態は、あまりにもテンプレート化しすぎてしまっていると思うんです。それぞれの会社のエゴが、とにかく出しづらいのが一番の大きな問題ではないかと。
『働き方改革』の名のもとに、結局みんな、どの会社も似通ったメッセージを出さざるを得ない状況になってしまっている。そうじゃなくて、もっとフレキシブル、もっと多様でいいじゃないですか。それぞれの考えをちゃんと打ち出していかなきゃ」(杉浦)
例えば、「うちは副業は認めない。その代わりに、あなたの人生をしっかり背負うから!」という会社があったっていい。1人でもそれを望む人がいれば、マッチング成立です。いくら副業がブームで時代の流れがあるとはいえ、すべての人が副業をしたいかというと……それは違うはずです。
「ある程度の規模の企業では、採用の母集団をとにかく大きくし、そこからコンマ数パーセントの内定者を出せば大成功なんですよね。そんな達成率、営業だったらすぐにクビじゃないですか(苦笑)
僕はもともと事業側にいたので、はじめて人事担当になったとき、なぜその結果で会社が喜んでいるのか、まったく理解できなかった。採用市場には、明らかにいびつな世界があると思います」(髙橋)
昨今の「働き方改革」は、単に企業側の都合で、肝心の働く側の個人が置いてきぼりになってしまっている。その結果、企業側のメッセージングもどんどん画一化して、採用のマッチングがなおさら難しくなっている——。
それが、杉浦と髙橋に共通する見解でした。
最後にたった一つ残すのは、「本当に必要なこと」
不自然な状態でテンプレ化してしまった採用形態。その固定観念を取り払うべく、モザイクワークでは綿密なインタビュー調査やヒアリングを重ね、さまざまな切り口からアイデアを提案しています。
「お客様に対して、まずはインタビュー調査からはじめます。社員の中には当然、ハイパフォーマーだけではなくローパフォーマーもいるわけで、私たちは双方に話を聞いていますね。さらに適性検査を導入して、その結果をすべてチェックしています。
そのうえで、採用プランに落とし込むうえでどんなことが重要なのか、この会社に必要なことは何かを考え、とにかく徹底的に削ぎ落としていきます」(杉浦)
本当に必要なことしか、残さない。それがモザイクワークとして大事にしているスタンスです。
とはいえ、完全に余計なものを削ぎ落とすことに慣れていない企業との間で、せめぎ合いが生まれることも多々あります。
「結局、組織や採用の話をややこしくしているのは、そこなんですよね。企業側はどうしても、保険をかけたくなる。だからいろいろな要素を追加しようとする。
最終的には企業判断になりますが、モザイクワークとしては、『そのたった1つの要素を追加するだけで、このプランの意味はなくなりますけどいいですか?』と問い続けていますね」(髙橋)
アイデアがシンプルであるが故の、難しさ。しかしそれを理解してくれるお客様との関係性も、少しずつ築くことができています。
「求める答えは、すべてお客様の中にあります。むしろ、お客様の中にしかないんです。僕たちの役割は、たった一つのそれを発見し、アイデアを加えてカタチにしていくこと。そのために、お客様と徹底的に向きあって、丁寧なヒアリングとディスカッションを重ねています」(杉浦)
>つづく