「働き方」といえば、東京では様々な企業が働き方改革を導入し始め、いまや誰もが関心を持つ話題です。しかし、地方ではどうでしょう。東京から新幹線で約2時間、新潟では、徐々にその流れが来つつあるようです。その一環として、6月24日に一人ひとりの「働く」に今起きていることを考えるイベント、新潟キャリアディベロップメントフォーラムが開催されました。
日曜日のお昼にもかかわらず、約80名が参加するイベントとなりました。高校生起業家、平松明花さんの特別講演は、モザイクワークの杉浦がモデレーターを務めました。その様子をレポートします。
やりたいことは小さくはじめ、続けることが大事
冒頭では、本イベントの主催である新潟CDFの理事長である小杉俊哉さんが、開催の背景を説明しました。
「新潟は土壌豊かで米や魚もとれる。ゆえに、危機感が少ないのではないか。また、東京の情報もほとんど入ってこない。これらの問題を、客観的な立場で見て、できることがあるかもしれない。そんな想いを持った、新潟出身で、現在は東京を中心にキャリア開発の第一線で活躍する人間が集まり語ったのがはじまりです」
「働く」について考える上で、キャリアコンサルタントとして活躍するグローリンク株式会社中藤美智子さんより、従来のキャリアの考え方と、近年の変化について説明がありました。
いくつか参考になるキャリアやプロジェクトを立ち上げられた方の紹介があったのち、中藤さんは、これらの共通点は「やりたいことを小さくスタートし、それを継続することで支援者が増え、大きくなること」だといいます。決して諦めないことが大切です。
15歳で起業することは法律上可能、でも制度上は難しい
特別講演を行った平松明花さんは現在高校1年生の15歳。株式会社CPCを今年2月に設立し、韓国コスメの輸入販売を行っています。
元々起業に興味はあったものの、行動するきっかけは海外で自分より年下の方が起業したことでした。負けていられないと動きだしましたが、実際に創業するまでには、いくつもの大きな壁がありました。
「登記は何歳でも可能ですが、登記に必要な印鑑証明を発行するための印鑑登録が15歳以上でないとできなかったため、15歳の誕生日まで待ちました。あとは、法務局の営業時間が学校の時間と被っていたので、部活の合間に体操着で駆け込んだり。窓口の方には、私が登記することを信じてもらえず、『本当にあなたの分ですか?』と何度も確認され、イチから事情を説明したりしました。15歳で起業するって、珍しいことなんだなと思いました」
創業したことで、反響はたくさんあります。友人をとても大事にする平松さんにとって、「15歳で起業するなんて、私の自慢だよ」と喜んでもらえたのは、なによりも嬉しかったと言います。一方で、校則ではアルバイトが禁止のため、「アルバイトは禁止なのに起業はいいのか?」と言われたそう。15歳での起業はまだまだ珍しいため、制度やルールが整っていない面も多そうです。
平松さんにとって、会社経営はわからないことだらけで、毎日が学びです。母と一緒に二人三脚で経営していますが、普段は仲良しな親子でも、経営のことになると一変。主に平日の夜や土日に発送作業や事業について議論しますが、このときは親子の会話とは思えないほどシビアに売上について議論したりします。
学校でも経営に関するセミナーに参加し、学んでいます。「『人は人でないと動かない』と先日のセミナーで登壇された方が話していたのが心に残ったので、大学では、こういったことも学んでみたい」と意欲的です。
「実は、起業したのは、女優になるという夢を実現するため、もうひとつの柱を持ちたかったという想いもあります。起業してからは、経営も面白いと思うようになってきたので、どちらも両立したいです。なにより、メイクして、『いつもよりかわいいね』と言われたときの笑顔が大好きなんです。その笑顔をCPCの事業を通じて広めていきたいです」
好きなことが最後に残る――改めて「働く」を考えてみると
講演後、平松さんに感想を聞くと「特に緊張せず、いつも通り話しました」。起業家というと、自分の想いやミッションなどをとにかく語るイメージがありますが、平松さんは、良い意味で「よくいる高校生」。母や姉ととても仲良しで、洋服の貸し借りや、冗談を言い合ったりしますし、学校の友達とは気が進まない科目の勉強を一緒にしたりします。
そんな平松さんがやりたいことを見つけられたのは、小さい頃から習い事をたくさんしてきたから。飽きてしまったら『こういう理由でやめたいです』と母を説得し、新しいことにどんどん挑戦していたからだといいます。勧められて始めたものもありましたが、自分が興味を持ったものが一番続くそうです。
起業し、会社を経営すること。それは好きなことだったり、やりたいことをしているだけで、働いているとはまったく思わない――今回、平松さんと話して一番衝撃を受けた言葉でした。平松さんの話は、私たちが普段、いかに一般的な「働く」概念にとらわれているか、気づかせてくれます。
杉浦はじめモザイクワークは、今後は組織が個に裏切られる時代になり、キャリアが流動的になると考えています。一人ひとりが働くことの動機付けが上手くできるようになると、組織としてもきちんと機能することを、これまでに様々な企業のお手伝いをしながら感じてきました。皆さまの組織で、このようなお困りのことがありましたら、お声がけください。