すまい」と「くらし」。一般的には聴き慣れた言葉でも、会社での”手当”となるとなんだか聴き慣れない、そんな社内サポート制度をつくりました。

住宅手当や地域手当と何が違うの、と思われそうなので、背景含めてお話しようと思います(我ながら結構気に入ってます、この制度)。

きっかけは、新入社員のこんなひとこと。

「新潟に住んでもいいですか」

どうして?、と聞くと「満員電車に乗らなくていいし(10時出社なのでそこまで混んではいないのですが)、意外と便利だし、何より川がある。川を散歩できるって最高じゃないですか」と話してくれた。おぉ、川ね。

ちなみに、当の新入社員は生まれも育ちも千葉県で、採用条件は東京勤務。新潟には縁もゆかりもなく、将来的にも新潟勤務は想定していなかった社員です。

そんな新入社員ですが、コロナウイルスの影響もあり、入社からしばらくは研修(社長のカバン持ち)のため新潟で働いてもらい、落ち着いた頃には東京に戻る予定だったのですが、気持ちに変化が生まれた様です。

確かに、地方(今回は新潟)は長閑で人も温かい。ランチのお店だって、3〜4回行ったら「いつもありがとう」に変わり明日の日替わりメニューを教えてくれたり(プレッシャー込)。家から会社まで、雄大な日本一の信濃川を眺めながら出勤だって可能だ。電車に乗らず生活もできる。どこ行ったって、三密なんてどこの話だろうと思うくらい人混みは少ないし、そもそも車社会だから密が少ない。

そんな環境に少しでも触れたら、素敵だなここで暮らしたいな、と思うのは自然な流れなのかなぁ、などと考えつつも何とか受け止めてあげたい、そして何より、”暮らし”を大切にしたいと思う新入社員を心から素敵だなと思ってしまいました。

この場所で暮らしていきたい(ここで働きたいではなく)という気持ちが自ら芽生えて、暮らし、そこで働ける。仕事はそのエリアでなくてもいい。東京や宮崎の仕事だってできる。そういうワークライフスタイル、そしてそれを決意した気持ちを、きちんと支援する会社でいたいなと思い、さっそく会長と話し合い(slackですが)手当の設置を決めました(数分で決定)。一見、地域手当や住宅手当みたいなものじゃないのかと思われそうですが、そうではなく、その場所で暮らし、そして働きたいと思う、そういうワークライフスタイルへの支援です。

新入社員のひょんな一言から、改めてワークスタイル/ライフスタイルについて考えて整理するきっかけをもらったわけですが、考えてみるとこの課題、「4つのところ」に整理できるなと思いました。「仕事の場所」「働くところ」「暮らすところ」「住むところ」。この4つをそれぞれの観点から選択できればいいのでしょうけど、「仕事」がそうはさせなかった。
仕事の場所が、働く場所にならざるを得ず、そして、暮らす場所にせざるを得ない。住む場所はもはや必要最低限。仕事をするために、暮らしを自由に選択できない。「素敵だな」という理由で暮らしを選択するのは難しい、よくよく考えたらちょっと窮屈だよなぁ、と改めて考えさせられました。

そんな状況だと、手当への考え方も、『仕事』に「働く場所」も「暮らす場所」も「住む場所」も合わせる代わりに(会社都合)、住宅手当や地域手当を支給するという、ある意味”補填”的なものでした。なので、もらって”当たり前”になるし、会社も”経費”と考え削減を検討したり。何だかお互いの我慢の上に成り立っているという感じでした。

働く場所も暮らす場所も住む場所も、仕事の(ある意味)犠牲になってきた

一方、「くらし手当」や「すまい手当」は、社員それぞれが自分の”素敵だな”と思う価値観に沿ってワークライフスタイルを考え、それに対して会社がきちんと支援する、言わば社員の決意に対する応援。受け取る側も払う側もとてもポジティブ。そこが大きな違いなんですよね。きっとその方が幸せに働けるし。

くらし手当も、自分が選んだ地域やコミュニティに(おこがましいですが)ちょっぴり貢献できるのでは、とも思っています。

実は今回の制度は、「仕事」と「生活」の間にある「と」の部分を、もう一度真面目に考えてみようというトライアルの一環です。ここがもっと自由になれば、どこで働いてもいいし、誰と働いてもいいし、どんな場所で暮らしたってどこに住んだっていい。ただ、まだこの「と」の部分がとても不自由で、そして、企業の多くがこの「と」の部分が意外に重要だ、ということに無自覚。だったら、失敗していいし、賛同されなくてもいいから、やってしまおうと。

モザイクワークという会社は、こういう仕組みを考え出し、実行し、皆さんにもどうぞどうぞと提供する会社です。なにかありましたら、いつでもお気軽にお声がけください。

ちなみに、当の新入社員は、私に言った翌週には家を決め引越手配を完了し、退去手続きも全て終えるという、今までにない動きを見せてみんなを驚かせてくれました。

(杉浦)